2011年12月21日水曜日

Very Good!・・・

私が高校生のころですから、もう40年以上前の話しです。

当時は予備校の模擬試験などは数えるほどしかありませんでした。現役高校生が受験する模擬試験としては、大手出版社であるO社の全国模試が普通でした。

ある時私が受けた模擬試験が返却されました。数学や国語はさておき、英語はたまたま99点という点数で、全国で1位を取ることができたのでした。大して高い得点を期待したわけではなかったので、試験が返ってきたときには自分の目が信じられず、とても嬉しかったことを覚えています。

中でも返却された答案用紙の私の名前の上に、採点官が朱色のペンで大きく「Very Good!」と書いてくれていたのが、今でもはっきりと記憶に残っています。

採点官にとっては、採点上のごくありふれた処理の一つだったのでしょう。採点時をしているとき、90点以上はGood,95点以上はVery Goodと書く、というような決まりが、もしかしたらあったのかもしれません。

もちろんその採点官がだれだか私は知りません。今から40年も前のことですので、もうこの世にはいないかもしれません。自分が誰の答案にVery Goodと書いたかなどは、たとえ存命であったとしても覚えているはずなどないことなのです。

でもその方が書いてくれたこの「Very Good!」の一言は、それから長く私を支えてくれることになりました。

英語が自分の明確な得意科目になったのも、将来は英語・英文学に方面に進路を決めようと思ったのも、考えてみるとあの時の試験の結果、つまりあの「Very Good!」のお陰だったのかもしれないと思うことすらあるほどです。

人の言葉は本当に不思議です。

子供たちと話していると、自分の言葉の無力さを日々嫌になるほど感じることがあり、

「人の言葉というのはまことに不便なもの。あたら言葉にしたために通じない心というものがある。いやはや、全く持って人の言葉はむなしいものよ・・・」(池波正太郎『剣客商売』)

などという部分に、強く共感を感じることもあります。

ですが、それとは反対に、たった一言の言葉、単語が、人の一生を支え、力づけることもあるのではないかと思うのです。

書いた人、言った人には全くその気がないのに、その人の言葉が強く相手の心に残り、結局はその人の一生を最後まで支えるものとなることもある・・・。

まさにこのことだと思います。

私は30年以上『教職』という立場にあります。教師は「ことば」が全てです。自分の「ことば」にそれなりの意味を読み取ってもらえるような話し・語りかけを、常に生徒に対してして行かねばなりません。

それは授業のときだけでなく、普段の何気ない会話の場面でも全く同じです。

そう思うと、私は今まで自分の言葉で果たしてどれだけの人を傷つけてきたか、思うだけでも恐ろしくなるほどです。

せめてこれからは、私にVery Goodと書いてくれた採点官ように、その人を将来にわたって支え、元気付け、生かすような言葉を伝えてゆきたいとは願っていますが、道は遠く険しいようです・・・。

でも、

「諦めてはいけない!」

のでしょうね(笑)。

これが私の自分へのチャレンジであるとしたら、勇気を持って乗り越えてゆきたいと考えています。

Who Dares Wins!  「勇気あるものが勝利する!」

は決して生徒に対していうだけの言葉ではないはずですから・・・(笑)。