2011年3月2日水曜日

大笑いしたこと(笑)

私は大体毎朝家を6時半過ぎには出るようにしています。
それでも中央線はかなり混んでおり、座れることはめったにありません。

車中では英語の本や日本語の本を読むようにしています。以前はよくKindleを持ち込んでいたのですが、KindleやiPadは(やってみれば分かりますが)かなり幅を取るので、座っているときならばまだしも、立ったままではなかなか上手に使えません。

昨日のことでした。朝急いで自宅を出たために、読み物をまったく持っていないのに気がつきました。
しかたないので、なんとなくぼや~っと車窓から外を見ていました。

普段は車内のデジタルスクリーンなど見ないのですが、他に何もすることもなかったので、なんとなく時間つぶしに目がそこに行っていました。

たまたま目に留まったのが「しぐさの心理学」とかいうプログラムでした。

男女合わせて4人ほどの若いビジネスマンが、机を挟んで会議をしています。おそらく営業トークなのでしょう。そのうちに女性の一人が机の上に身を乗り出して話しを聞くような姿勢になるのです。

同じように若い男性もそれにあわせて話しに加わってゆきます。表情から考えて、おそらく話しに熱が入っているのだろうなぁということは理解できるような絵になっています。

そこで質問が入ります。

「身を乗り出して話しを継続しようとする人の態度は、何を意味するのでしょう?」

答が、

「相手との距離を近づけようとする心理になっています」

思わず笑ってしまいました(笑)。

こんなことは当たり前のことなのであって、わざわざ「しぐさの心理学」などと大上段に振りかぶる必要などまったくないことです。

子供でも分かることであり、かつ、ちょっと「知恵」の働く人間ならば身を乗り出して聞き、相手に「商談成立の可能性あり」と思わせておいて、本当に大事なことをしゃべらせておき、あとから話しを自分に有利なように展開させてゆくことぐらいはするでしょう。

こんなに程度の低いプログラムであっても、4人の登場人物がいて、移しているカメラマンがいて、指示だしをする監督がいる以上、それなりのお金と時間がかかっているに違いありません。

「もったいないことだ」

と思わざるを得ません。

それより驚いたのが、私の隣でこの番組を熱心に見ながらしきりに頷いている女性がいたことでした。まあ、新しい発見というのは、いつ、どこであるのか分からないわけですから、発見そのもを喜ぶことは悪くありませんが・・・。こういうことを「新しい発見」だという方は、今までどこでどのような生活をしていたのか、私としては興味なしとしないのです。「心理学」と名がつけばなんとなくありがたいような感じになるのでしょうか(笑)。

これに限らず、実は「心理学」とは、そうとうに胡散臭い学問の分野だ、と言ってもよいのです。熱心に心理学の研究をされている人も世の中にはいると思いますから、「胡散臭い」というう言い方を変えると『心理』学、という名前の割りに本当の人の気持ちは分からないのだ、ということです。

もちろん心理学には心理学なりの学問対象があり、それなりに存在価値のある方法論も持っています。でも「心理学をやると人間の心理が分かる」という考え方ほど危険なものはありません。

心理学で理解できる人間の心理は、心理全体のほんの一部に過ぎず、その一部を全体であると錯覚すると、とんでもないことになる、ということだけは覚えておいてよいものだと思います。

人の心理、感情、感覚を「よく」理解したいと思う人は、俗流心理学の本など読んで分かった気になるのではなく、ちゃんとした文学を読むべきだというのが、私なりの考え方です。

前述の、車内スクリーンを見てしきりに頷いていた女性には、『千恵子抄』でもご紹介させていただければよかったのでしょうかね(笑)。