2012年2月3日金曜日

empty chairs and an empty table・・・

2月、3月は「世代交代」の時期です。合格を決めた人から自習室の自分の机を整理しはじめます。空いた席には新入生が座り、また新しい学年が始まるのです。

『レ・ミゼラブル』というミュージカルの中で、主人公(・・・と言っていいかどうか微妙なところですが・笑)のマリウスが、仲の良かった仲間の姿を偲びながら、誰もいない酒場で歌う歌があります。それが「Empty chairs and an empty table」です。劇も終わりに近くなった場面で歌われるこの歌には、独特の哀愁が感じられて、One day moreと並んで私のとても好きな曲です。

「圧制から市民を解放し、本当に自由で皆が一緒に進んで行ける社会を作ろう!」と仲間と一緒に立ち上がったマリウスでしたが、自分が最愛の恋人であるコゼットと、その父親代わりのジャン・バルジャンとの関係の中でうろうろしているうちに、パリで蜂起した仲間は軍隊に全員制圧されて殺されてしまいます。

自分だけ助かった(実はジャン・バルジャンに密かに助けられたのですが)こと、自分にはもうコゼット以外何一つ残されてはいないということを、誰も座っていない酒場の中で、マリウスは一人思い出しながら涙にくれるのです。

医進塾にこの自習室ができたのは09年です。各年代の座席表が私の手元にあり、誰がどこに座っていて、室長が誰であったかまで、全部記載されています。

誰もいない自習室に、その座席表を持って入ると、過ぎ去った年が一度に戻るような錯覚に陥ることがあります。座っていた人の一人ひとりを思い出しながら、

「今、どんなことをしているだろう・・・」

と、しばし感慨にふけることもあります。

最近はFaceBookなどという便利なものがあるため、医進の卒業生ともなんとなくみんなつながっているような感じがします。それはそれでよいのですが、私はこの小さな塾の自習室で、明日を夢見て今の自分を高めようと必死になって努力を重ねていた昔の彼ら、彼女らの姿のほうが好ましいように思えることもあるのです。

先日机を整理にきたK下さんとすこし部屋で話しました。

私「さびしくなるよねぇ・・・君たちがいなくなると・・・」

彼女「大丈夫ですよ!次の世代が来ますから!」

私「そうは言っても、自動的に変わるわけではないからね・・・。君たちの思い出をかみ締めながら送り出して、同時に新しい世代を受け入れて新しい人間関係を作って行くって、結構大変なんだよ」

彼女「わかりますけれど、でも今までやってきたんですよね、それで。私たちのときもそうだったのだから、先生!大丈夫ですよ」

励まされたのだか、けなされたのだかよくわからないのですが(笑)、でもそれぞれに新しいスタートを切ることは大事だし、それが私の仕事でもあるのですから、やはりやるしかないのでしょう。

今日も、何人か入学を考えているという人が見学に見えました。第一志望に合格して行った先輩の紹介で来ました、という人もいました。

そう、確かに時間は過ぎ去り、誰にとっても新しいスタート・出発の時期が近づいてきています。私一人が感傷的になってもしかたのないことなのかもしれませんね。