アポロ13号が月面着陸を目指して地球を飛び立ったのは1970年4月13日のことでした。それ以前にアポロ11号が月面着陸を成功させていましたし、アメリカ国民の関心はそれほど高いものではありませんでした。
それがアポロ11号よりも大きな、世界中の注目を浴びるようになったのは、皮肉なことに13号の事故のためでした。月へと向かう宇宙飛行中、液化酸素タンクが爆発し、乗務員の生命線である酸素が大量に失われたのでした。
液化酸素は乗務員の呼吸のためだけではなく、アポロ13号内の暖房やコンピュータ制御にも使います。推進エネルギーとしても必須のものです。命綱の酸素がなくては月面着陸はおろか地球に戻ることすらおぼつかない、最悪の状況に彼らは立ち至りました。
この最悪の状況を、冷静な判断と果敢な試み、それに独創的なアイデアをもって乗り切ったのが、当時のケネディ宇宙センターの地上管制員、それにアポロ13号の乗組員たちだったのです。
事故後、誰がみても助からないはずの乗務員たちが無事に太平洋に着地し、救助に向かった船に回収されたとき、世界中が彼らの壮挙に心からの拍手を送りました。そしてそれは「successful failure:輝かしい失敗」としてアメリカ航空宇宙局史上、歴史に残る快挙として長く語り継がれることとなったのでした。
「アメリカの技術力は、アポロ11号を月面着陸させたときよりも、13号を無事に地球に戻せたことで明確に証明された」と言われています。
成功続きの人生はありません。失敗もあります。いや、失敗のほうが多いのが人間の人生というものなのではないでしょうか。
その失敗にくじけず、それを成功に導くことが、人間にだけ許された能力なのだと思うのです。
みなさんの入試の失敗も、そう思えば、そしてそう思うことによってのみ、みなさんをこれから大きく成長させてゆく契機になるだと、私たちは確信しています。
来年度のsuccessful failureを目指して、今、このときに全力を尽くしましょう。