2012年6月6日水曜日

上から目線の若者(続)

先日お話しした「上から目線の若者」の記事です。

http://news.livedoor.com/article/detail/6607485/

改めてこの記事を見ていて、しばらく前にあった出来事を思い出しました。

数年前の話です。

ある講師候補の方と面接をすることになりました。彼は名前を出せば誰でも知っている国立大学の理科系学部を卒業し、塾や予備校の講師を学部時代からいろいろとやっているという経歴の方でした。

医系専門塾である医進塾では、どんな大学の卒業生であっても、学部卒業生というだけでは滅多に採用しません。彼と会ってみようと思ったのは、学部卒業であるにも関わらず、「職歴」の欄にやたらにたくさんの塾や予備校の名前が書き連ねてあったからです。

In-take面接(最初の面接)ですので、基本的な事項の確認から入ります。私が職歴欄に書いてあった塾やら予備校やらでの業務実績を確認したところ、塾は小学生・中学生対象の補習塾がほとんど、予備校では「チューター」という立場で夜間の自習時間監督をしていただけだということがわかりました。

そういう情報が一切記載されていなかったので、通常の授業をそこでやっていたものと私は勘違いしたのでした。

「こういう書き方は、誤解を招くから、きちんと書いたほうがいいですよ」

と私が言うと、

履歴書はプライベートなものなので、書き方にまでいろいろ言われる筋合いはない

こう言うのです(笑)。

「個人の属性の中でもっともプライベートなものは、自分の名前ですよね。でもその名前はパブリックな場で他人が使ってくれないとそもそも意味がないでしょ?名刺も同じ、履歴書だって同じものなんですよ。それは知っておいたほうがいいですね」

今にして思うと、私もずいぶん穏やかな言い方をしたものだと、自分で自分を褒めてやりたくなります(笑)。

でもその後の彼の返答はまさに「常軌を逸した」(笑)ものでした。

自分は22歳で経験がない。そのことは医進塾さんも分かっているはずだ。分かっていて面談を設定したということはそちらの責任だ。私の経験のなさをきちんと指導してくれるような研修を、医進塾さんではどのように用意してくれているのか、それが知りたい

・・・私は思わず彼の顔をまじまじと見てしまいました。とても

『正気』

とは思えなかったからです。

それに続けて彼は次のようなことも付け加えました。

医学系専門予備校に応募した以上、自分を採用した場合はしっかりした研修の場が用意されるはずだから、それがどのような内容なのかを教えてもらいたい。その内容によって自分がこちらで働くかどうかを考えさせてもらう

私はすぐに面接の中止を伝え、目の前で彼の履歴書を封筒につめなおして本人に返却し、次のように言って部屋からたたき出しました(笑)。

「私たちはあなたの現在の指導力に応じてその対価として金銭をお支払いすることは考えます。ですが右も左も分からないあなたの将来に投資しようとするほど物好きでも暇人でもありません。お引取りください」

そして彼を部屋から出すとき、次のようにも言いました。

「医進塾には様々な研修の場が用意されています。ですがそれは生徒のためになることを何とかして身につけたいと『謙虚』に願う人のためのものです。自分の力や経験のなさを他人のせいにするような方のためのものではありません。」

今にして思うと彼はよくその時まであれでやれてきたと思います。おそらくは出身大学の名前がなせることだったのでしょう。

でも彼があの調子で世の中を渡ってゆけると思ったらこれほど大きな間違いはありません。そんなに世の中は甘くない。彼はいつかどこかでそれを思い知ることになるのでしょう。

若いからまだまだ自分を変えることは出来るし成長の機会もあるはずです。彼がどこかの学校で立派に講師として働いてくれていることを、今は祈りたいと思います。