2008年6月23日月曜日

情熱・努力・実力

神田にある老舗のお寿司屋さんに、すし職人見習いとして入った地方出身の若者がいました。言葉の問題もあり、なかなか江戸前の仕事のやり方になれることができません。寿司職人として基本中の基本である、白米の炊き方から失敗の連続で、何度やり直してもうまくいかない自分に嫌気がさし、彼は田舎に帰ろうとします。

こっそりと部屋に置手紙を置き、人知れずお店を抜け出してJR御茶ノ水の駅で上野行きの切符を買い、まさに電車に乗ろうとしたその彼の前を、乗りなれない補助輪なしの自転車の練習中の、店のお嬢さん(幼稚園生です・笑)が通り過ぎます。

手助けをしようとする周りの大人の手も借りず、何度も転び、手足をキズだらけにしながら「○○(その青年の名前です)も一人前になろうとしてがんばっている!自分も早く大人の自転車にのれるようになれなきゃ!」と言って練習を続けてゆくのです。

その姿を見た青年は、手の中の切符をその場で破り捨て、もう一度店に戻ってゆき修行を続ける・・・という、そういう筋でした。

できすぎた設定だといえば言えるような、良くあるタイプの話です。

その彼に、お店の女将さん(90歳以上ですが、まだカクシャクとしています)が言うのです。「情熱が努力を生み、努力がいつか実力に変わるのさ。できるだけやってごらん」。

確かに良くあるタイプの、浪花節的なお話です。でもこのような話が良くあるということは、それだけ多くの人から求められるひとつの理想の生き方がここにあるからだとは言えないでしょうか。

勉強は一にも二にも、まず努力から始まります。楽をして学力がつくほど勉強は甘くありません。でもその努力は、その先にある目標に向けての正しい「情熱」に支えられていなければなりません。情熱のない努力は非常に変質的なものです。

実力はその正しい努力の結果が形になったものと言ってもよいでしょう。

医進塾の塾生には、この「情熱に支えられた努力」を、ぜひ心に刻んでもらいたいと思うこのごろです。

PS
この話は『こちら葛飾区亀有公園前派出所』からのものです(笑)。私は『こちカメ』第一巻からの熱烈なファンです。日本を知りたいという外国人には、日本語がある程度読めるようになったら、かならず『こちカメ』は読んでおきなさいよ、とアドバイスをすることにしております(笑)。